Nov 5, 2019

【Q&A】久留米絣のMONPEは、なぜ軽くて柔らかいの?

Q. 久留米絣のMONPEは、なぜ軽くて柔らかいの?

A. そもそも、前提として何と比べて軽くて柔らかいのか?

外履きする綿のズボンという枠で比べた際、ほぼ同じ大きさのジーンズが600g(弊社調べ)、チノパンが440g(弊社調べ)の中、MONPEは180〜250g(生地の厚さと種類による)と非常に軽量です。

穿いたときの柔らかさはあくまでも主観的な感覚なので比べるのは難しいですが、通気性がよくさらっとしてているため、穿いているのを忘れそうになる、というお客様の声が多いのは特徴です。
私たちも化繊、麻、綿麻混合、他産地の綿織物など、多種多様な生地を履き比べたり、MONPEという型でコラボをしたりする中で、少しずつ体感値を増やしながら、それぞれの強み・弱み・特徴を調べています。そうした比較の中で、久留米絣のMONPEの軽さ・柔らかさを実感しています。

そうした前提をご理解いただいた上で、改めてなぜ軽くて柔らかいのか?お答えします。
要因は大きく分けると、機械の特色によるもの、そして産地としての特色によるもの、があります。

①風合いを生み出すシャトル織機
久留米絣の産地には、手織りと機械織りの2種類がありますが、MONPEには主に機械織りの生地を使っています。ただ「機械織り」といっても、80年以上の前のヴィンテージ織機を今でもつかっており、手織りより少しだけ効率化したくらいの「半機械織り」といった方が正確かもしれません。

使われている織機は、トヨタ自動車創業者の豊田佐吉が開発したTOYOTA式の小幅シャトル織機で、現代の高速織機と比べると、糸の張りがゆるく、また織りも目がつまりすぎずに緩やかなのが特徴で、昔の手織りに近い風合いの生地になるのです。この産業遺産的な小幅シャトル織機こそが、軽さと柔らかさを生み出す第一の要因です。

②蒸し暑い風土に合わせた生地感の追求
シャトル織機はもう新しくは作られていませんが、会津木綿、伊勢木綿、遠州織物、備後絣など、日本各地の綿織物産地でいまでも使われています。しかし、同じシャトル織機を使っているからといって、風合いが一緒とは限りません。糸の太さ、密度、たて糸の本数、織るときの打ち込みの強度など、様々な要因で肌触りや光沢が変わります。

少しずつですが、いろいろな生地感の比較をしてきた中で、久留米絣は特に通気性・軽さ・やわらかさを追求してきた織物だと感じています。かつては日常着の着物として、その後は洋服として、蒸し暑い西日本の気候の中で毎日身につけてもらえる生地として生き残るために、織元によっては数世代にわたって糸の工夫や織機の改造などを重ねてきています。

特に農作業着であったもんぺは、通気性・吸水性・速乾性などが求められていたでしょう。そんな織物産地としての生き残りをかけた創意工夫と地域性が、いまの久留米絣に風合いにあらわれているのかもしれません。


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